チームのブレインストーミングを活性化するアナロジー思考の活用法
チームでのアイデア創出やブレインストーミングは、多くのビジネス現場で日常的に行われています。しかし、「いつも同じようなアイデアしか出ない」「特定のメンバーの発言に偏りがち」「形骸化してしまっている」といった課題を感じている方も少なくないのではないでしょうか。
これらの課題を解決し、チームの発想力を劇的に高める手法の一つに「アナロジー思考」があります。個人で使うイメージが強いアナロジー思考ですが、チームで活用することで、より多様で斬新なアイデアを生み出すことが可能になります。
なぜチームでアナロジー思考が有効なのか
アナロジー思考とは、ある対象（課題）と構造的に似ている別の対象（知識や経験）を比較し、類似点から新たなひらめきや解決策を得る思考法です。例えば、「企業の組織構造」を「生物の生態系」に例えて考えるようなケースです。
チームでアナロジー思考を取り入れる最大の利点は、参加者それぞれの異なる知識や経験を持ち寄れる点にあります。一人では思いつかないような、遠く離れた分野からのアナロジーの種を、チームの中から見つけ出すことができるのです。これにより、固定観念にとらわれず、より創造的な発想へとつながります。
チームで実践するアナロジー思考の具体的なステップ
チームでアナロジー思考を活用したブレインストーミングを行うには、いくつかのステップを踏むことが効果的です。
ステップ1：解決したい課題を明確にする
まず、チームで取り組むべき課題やテーマを具体的に定義します。「新商品のアイデアを出す」といった漠然としたものではなく、「30代の働く女性向けに、通勤時間を快適にするサービスを考える」「既存サービスの解約率を下げる新しいアプローチを見つける」のように、焦点を絞ることが重要です。課題が明確であればあるほど、適切なアナロジーの源泉を見つけやすくなります。
ステップ2：アナロジーの源泉となる分野を選ぶ
次に、解決したい課題とは一見関係のない異分野をいくつか選びます。ここがチームの多様性が活きるポイントです。メンバーそれぞれの興味や専門外の分野（自然界、スポーツ、歴史、芸術、宇宙、料理、育児など）から、面白そうなものを自由に提案し合います。
例えば、先ほどの「通勤時間を快適にするサービス」という課題であれば、「空港の搭乗システム」「動物の渡り」「遊園地のアトラクション運営」「プロ野球の観客誘導」などがアナロジーの源泉候補となりえます。
ステップ3：選んだ分野の仕組みや要素を深く探求する
選んだ分野について、チームで深く掘り下げていきます。「それはどのような要素で構成されているか」「どのように機能しているか」「成功要因は何か」「どんな課題があるか」「ユニークな点は何か」などを問いかけながら情報を共有し、理解を深めます。
例えば、「空港の搭乗システム」であれば、「チェックイン」「手荷物預け」「保安検査」「搭乗口への移動」「搭乗手続き」「座席への誘導」といった流れや、「予約システム」「誘導サイン」「係員の役割」「待ち時間の発生」「遅延への対応」といった要素が挙げられます。
ステップ4：アナロジーを形成し、アイデアを出す
いよいよ、選んだ分野の仕組みや要素を、元の課題に当てはめて考えます。「もし『通勤』が『空港の搭乗』のようだったら、どんなサービスが考えられるか？」のように、アナロジーを意識的に作り出し、そこから生まれるアイデアを自由に出していきます。
「空港の搭乗システム」からのアナロジーであれば、以下のようなアイデアが考えられます。 * 「座席予約」のように、通勤時間帯の電車内の特定のスペースを予約できるサービス。 * 「手荷物預け」のように、駅のロッカーに荷物を預けて身軽に通勤できるサービス。 * 「保安検査」のように、通勤時のストレス要因を事前にチェック・排除する仕組み（例: 混雑情報に応じたルート提案、騒音を遮断する技術の応用）。 * 「搭乗口への誘導」のように、駅構内や乗り換えをスムーズにするナビゲーションアプリ。 * 「遅延への対応」における情報提供や代替手段の手配の仕組みを、電車の遅延時対応に応用する。
一見突飛に思えるアイデアも、否定せずにすべて出し切ることが重要です。
ステップ5：アイデアを発展させ、現実的な形に落とし込む
出されたアイデアの中から、面白いものや実現可能性のありそうなものをいくつか選び、さらに深掘りしていきます。「このアイデアを実現するには何が必要か？」「ターゲット顧客は誰か？」「収益性はどうか？」など、具体的な検討を重ね、ビジネスとして成立する形へと磨き上げていきます。
チームでのアナロジー思考を促進するテクニック
チームでアナロジー思考の効果を最大限に引き出すためには、いくつかの工夫が役立ちます。
- 視覚的なツールを使う: ホワイトボードや模造紙に課題とアナロジーの源泉、それぞれの要素、そこから生まれたアイデアなどを書き出し、全体像を共有します。簡単なアナロジーマップを作成するのも良いでしょう。
- 質問リストを用意する: アナロジーを考える際の問いかけのリスト（例：「〇〇の『中心』は何だろう？」「〇〇の『変化』はどうやって起きる？」「〇〇で『効率化』のためにしていることは？」「〇〇が『失敗』するときはどんな時？」）を用意しておくと、思考を深める助けになります。
- 異分野からのゲストを招く: 可能であれば、選んだアナロジーの源泉分野の専門家や愛好家を一時的にチームに招き、話を伺うことで、より深いインサイトを得られます。
- 安全な雰囲気を作る: どのようなアイデアやアナロジーも尊重される、心理的に安全な環境をチーム内で構築します。突飛な発想こそがブレークスルーの種となる可能性を共有します。
まとめ
チームでのブレインストーミングがマンネリ化し、新たなアイデアが出にくい状況にある場合、アナロジー思考は非常に有効な突破口となり得ます。個人ではたどり着けないような異分野からの視点を、チームの集合知によって引き出すことが可能になるからです。
まずは簡単な課題から、あるいは短い時間で試してみてはいかがでしょうか。チームで楽しみながらアナロジーを探求するプロセス自体が、創造性を刺激し、メンバー間のコミュニケーションを活性化させることにもつながるはずです。アナロジー思考をチームに取り入れ、固定観念を打ち破る新しい発想を生み出してください。